ただもう育児犬と見て
すっかり頼ることになったのだが、
これはもう不思議、
信じ難いまでになまでに一変した。
親ゆずりか?
ちょっと見かけはかわいい、
お人形さんみたいと、うっとりのカンバセながら、
その実体は尋常ではない、年柄年中救急車、
顔面だけでも17針の継ぎ接ぎ手術、
朝から晩までくんずほぐれつ大暴れの子供たちが一変した。
喧嘩というものをしなくなったのだ。
兄弟喧嘩だけではない、
近場の子供たちも同じ。
たとえば末っ子の場合、
まさに朝から晩までというくらいに、
連日、我が家の庭に
3才前後の子供たちが、集まって暮らしていたのだが、
どういうわけか泣いたりもしない、
喧嘩もしない。
で、真ん中にベンジャミン。
れっきとしたセントバーナード犬雄犬だが
母親役、かれが子供たちの真ん中にいて、
たいていは、首に花輪巻き付けられたりして座っていて、
そのスタイルで世界は不思議と静穏に
緩やかに、展開されていたのだ……

そこでは何事も起こらない。
危険なこと、不幸な事はおこらないのである。
いったいママゴトでもしていたのだろうか?
大型犬は飼育が簡単ではないとの評判もあり、
ぞろぞろ子供を引き連れて、
大犬まで飼うとなると
ちと頭おかしいと思われたりだったが、
じつは大犬のお陰で私は母親業務は卒業、
すっかりめでたく解放されたのであった。

つまり、
4人が4人とも保育園、
幼稚園にいかずじまい、
安上がりでもあったわけで、
ともかく私は並外れた、まさに人間離れした
聖人君子のごとき犬をキャッチ。
育児をお任せするという幸運を掴んだのだ。